おなかの菌が、心臓や血管に「手紙」を送っている?
おなかと心臓、遠いようで近い話
おなか(腸)と心臓は、体の中でずいぶん離れた場所にあります。
だからあまり関係がなさそうに思えます。
ところが最近の研究で、腸の中の菌が心臓や血管の健康にも関わっているらしいと分かってきました。
2020年に発表された総説(研究をまとめた論文)は、この「腸と心臓のつながり」を説明しています。
アメリカの研究者たちがまとめた、注目の論文です。
じつは腸内細菌は、消化を助けるだけの存在ではありませんでした。

腸内細菌は「体で一番大きな工場」
わたしたちが食べたものは、腸で腸内細菌に出会います。
腸内細菌はその食べものを材料にして、いろいろな物質を作り出します。
この作り出された物質を「代謝物(たいしゃぶつ)」と呼びます。
代謝物は腸の中だけでなく、血液に乗って体じゅうに運ばれます。
そのため腸内細菌は「体で一番大きな内分泌器官(物質を出す工場)」とも呼ばれています。
つまり腸内細菌は、体のあちこちに“お手紙”を送るように影響を届けているのです。
そのお手紙のいくつかが、心臓や血管にも届いていたというわけです。
カギをにぎる物質「TMAO」
この論文でとくに注目されているのが「TMAO(ティーマオ)」という物質です。
むずかしい名前ですが、腸内細菌が作る代謝物のひとつだと覚えておけば大丈夫です。
もとになるのは、肉や卵などに多くふくまれるある成分です。
その成分を腸内細菌が受けとって、体の中でTMAOという物質に変えていきます。
大規模な研究では、血液の中のTMAOが多い人は心臓や血管の病気のリスクと関連する傾向が報告されています。
動物を使った実験でも、TMAOが血管によくない影響をおよぼしうることが示されています。
同じものを食べても、腸内細菌の顔ぶれによって作られる物質の量は変わってきます。
だからこそ腸内細菌のバランスが大切だと考えられているのです。

「よい物質」を作る菌もいる
ここまで聞くと、腸内細菌が悪者のように思えるかもしれません。
でも、それは早とちりです。
腸内細菌は体にうれしい物質もたくさん作っています。
その代表が、食物繊維から作られる「短鎖脂肪酸」です。
短鎖脂肪酸には、血圧や血管の状態によい方向で関わる可能性が報告されています。
ある研究では、塩分をひかえる食事を続けた人たちで血液中の短鎖脂肪酸が増えたことが紹介されています。
そしてその増加が、血圧や血管のかたさの改善と関連していたと報告されています。
つまり腸内細菌は、心臓や血管にとって「味方にも要注意にもなる」存在なのです。
どちらの物質が多く作られるかは、毎日の食事と腸内環境しだいだといえます。
食べるものと、腸を整えること
この論文が教えてくれる大事なことは、とてもシンプルです。
「何を食べるか」と「どんな腸内細菌をもっているか」が、体の健康に関わっているということです。
食物繊維をふくむ食事は、よい物質を作る菌のエサになります。
いろいろな菌がにぎやかにくらす腸を保つことが、遠くの心臓や血管を思いやることにもつながるのかもしれません。
これは人だけの話ではありません。
犬や猫も、年齢を重ねると心臓の健康が気になることがあります。
毎日の食事と腸内環境を整えてあげることは、体全体をいたわる一歩になります。

ここは注意したいポイント
とはいえ、腸を整えれば心臓の病気がふせげると言いきれるわけではありません。
論文が紹介しているのは、研究で見つかった「関連」やこれからの期待です。
心臓や血管の病気には、体質・生活習慣・年齢など多くの要因が関わります。
腸活だけに頼らず、バランスのよい食事や運動、そして定期的な健康チェックが大切です。
気になる症状があるときは、早めに医師に相談してください。
ペットの心臓の健康が心配なときも、まずはかかりつけの獣医師にみてもらいましょう。
まとめ
腸内細菌は食べたものから代謝物を作り、心臓や血管にも影響を届けています。
TMAOのように、リスクとの関連が報告されている物質もあります。
一方で、短鎖脂肪酸のように体にうれしい物質を作る菌もいます。
どちらが増えるかは、毎日の食事と腸内環境しだいだと考えられています。
クロノーブは米ぬかを発酵させた生きた菌で、腸から体全体の健康を支えることを大切にしています。
出典
Witkowski M, Weeks TL, Hazen SL. “Gut Microbiota and Cardiovascular Disease.” Circulation Research. 2020;127(4):553–570. doi:10.1161/CIRCRESAHA.120.316242