生きたまま腸へ運ばれる菌がいる 芽胞という小さな殻のしくみ
口から入った菌は どこへ向かうのか
わたしたちやペットが口にした菌は、胃と腸という長い道のりを通っていきます。
その途中には強い酸で満たされた胃があり、多くの菌はここで力を失います。
ところが、この関門をうまく通り抜けて腸まで届くタイプの菌がいます。
その代表が、バチルス(Bacillus)という仲間です。
バチルスは「芽胞(がほう)」という小さな殻をつくる力を持っています。

芽胞という かたい殻のはたらき
芽胞は、まわりの環境が厳しくなったときに菌が身を守るためにつくるカプセルのようなものです。
中身は眠ったような状態になり、酸や熱や乾燥にも強くなります。
研究をまとめた総説では、あるバチルスの芽胞がpH2.5という強い酸性のなかでも最長で6時間ほど耐えたと報告されています。
胃を通り抜けたあとは小腸の空腸や回腸のあたりで殻を破って目を覚まし、活動を始めると考えられています。
ふつうの菌と芽胞をつくる菌のちがいをイメージにすると、次のようになります。

本当に腸まで届いているのか
殻が強いという話だけでは、実際に体の中を通り抜けたかどうかまでは分かりません。
そこで研究者たちは、口から入れた菌が便に出てくるかどうかを調べてきました。
ある報告では、便1グラムあたり10の3乗から10の8乗個ほどのバチルスが回収されています。
別の調べでは、30人の便から10種類ものバチルスの仲間が見つかりました。
これは芽胞が胃を越えて腸に届き、そこで数を増やしうることを示す手がかりです。

米ぬかの発酵とも つながる話
芽胞をつくる菌は、発酵食品づくりの現場でも古くから使われてきました。
納豆菌もバチルスの仲間で、大豆を力強く発酵させることで知られています。
クロノーブのように米ぬかを発酵させる工程でも、こうした菌の仲間がはたらいています。
生きて腸に届きやすいという性質は、生きた菌をそのまま届けたいという発想と相性がよいといえます。
気をつけたいこと
ここで大切なのは、腸まで届くことと体によい効果があることは別だという点です。
届いたからといって、何かの不調が治ったり防げたりするわけではありません。
同じバチルスでも種類はさまざまで、なかには利用に注意が必要なものもあると総説は指摘しています。
だからこそ、どの菌をどれだけ使うのかという見極めが欠かせません。
持病があるかたやペット、薬を使っている場合は、獣医師や医師に相談してから取り入れると安心です。
体質や体調によって合わないこともあるので、少しずつ様子を見ながら続けるのがおすすめです。
出典
Elshaghabee FMF, Rokana N, Gulhane RD, Sharma C, Panwar H. Bacillus as potential probiotics: Status, concerns, and future perspectives. Frontiers in Microbiology. 2017; 8: 1490. DOI: 10.3389/fmicb.2017.01490. https://doi.org/10.3389/fmicb.2017.01490