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米ぬかの健康作用

2026.07.13

米ぬかの食物繊維がすごい理由―コレステロール・腸内環境・大腸がんへの効果

捨てられがちな「米ぬか」に、腸と血管を守る力があった

お米を精米するときに出る「米ぬか」。
ぬか漬けや肥料として使われることはあっても、多くは廃棄されてしまう副産物というイメージが強いのではないでしょうか。
しかし1994年に発表された研究レビューによると、米ぬかにはコレステロールの上昇を抑えたり、腸内環境を整えたり、大腸がんのリスクを下げたりする可能性を持つ、優れた食物繊維が含まれていることが分かっています。

雪印乳業(当時)の技術研究所による総説論文「米ぬか食物繊維の機能性について」をもとに、米ぬかの隠れた実力を紹介します。

主役は「ヘミセルロースB画分」という水溶性の繊維

米ぬかにはおよそ3割もの食物繊維が含まれています。
その中身は主にセルロース、ヘミセルロース、ペクチン質、リグニンといった、植物の細胞壁を作る成分です。

一般的に、ヘミセルロースは穀物のぬかやふすまに含まれる「水に溶けない食物繊維」というイメージを持たれがちです。
ところが米ぬかに含まれるヘミセルロースの一部(B画分と呼ばれる成分)は、抽出・分離することで初めて水に溶ける性質を持つことが分かってきました。
この論文の著者らは、まさにこの水溶性の画分に着目して研究を重ねてきました。

コレステロールの上昇を抑える

水に溶ける食物繊維は、一般にコレステロールの吸収を妨げたり、胆汁酸の排出を促したりすることで、血液中のコレステロール濃度の上昇を抑えると考えられています。
ただし、米ぬかヘミセルロースはペクチンのようなとろみをほとんど持たないため、その効果の仕組みは長らく謎でした。
高コレステロール食を与えたラットの実験では、米ぬかヘミセルロースを0.5%程度混ぜるだけで、血液中のコレステロール濃度の上昇が抑えられることが確認されました。

興味深いのは、そのメカニズムがペクチンとは異なっていた点です。
ペクチンが食事由来のコレステロールの吸収そのものを妨げるのに対し、米ぬかヘミセルロースは吸収を妨げる代わりに、体外への胆汁酸の排出を促す働きをしていました。
つまり、体に入ったコレステロールを肝臓で分解しやすくする方向で効果を発揮していると考えられています。

お腹の中の善玉菌を増やす

米ぬかヘミセルロースは、腸内細菌のうちビフィズス菌によって特によく利用される(発酵されやすい)ことも分かりました。
実際にラットに2%のレベルで与えたところ、糞便中のビフィズス菌の数が明らかに増加しました。
ビフィズス菌が増えて腸内で発酵が進むと、酢酸などの短鎖脂肪酸が多く作られ、腸内(盲腸内)のpHが下がることも確認されています。
腸内が酸性に傾くと、腐敗菌のような好ましくない菌が増えにくくなるため、これが腸内環境の改善につながっていると考えられます。

大腸がんの発生率を下げる可能性

もっとも印象的なのが、大腸がんに関する実験結果です。大腸がんを誘発する薬剤を投与したラットに、米ぬかヘミセルロースを含む餌を与えたところ、摂取量に応じて大腸がんの発生率が下がることが示されました。
対照群では25匹中21匹(85%)にがんが見られたのに対し、米ぬかヘミセルロースを2%与えた群では76%、4%与えた群では60%まで発生率が下がりました。
摂取量が増えるほど発生率が下がるという、きれいな量反応関係が見られたのです。

論文の著者らは、この効果が食物繊維による物理的な作用(発がん物質を吸着するなど)よりも、腸内細菌を介した代謝の変化によってもたらされた可能性が高いと考察しています。

食品への応用に向けた課題

米ぬかヘミセルロースを実際の食品素材として活用するには、実験室での抽出方法をそのまま工業化するわけにはいきません。
水酸化ナトリウムを使う従来の方法では、繊維が茶色く変色してしまったり、たんぱく質が混ざり込んでしまったりする問題がありました。


そこで著者らは、複数の抽出剤を比較検討しました。
その結果、水酸化カルシウムを使う方法が、余分なたんぱく質除去の手間も省け、変色も少なく、コレステロール上昇抑制効果もしっかり保たれるという、もっともバランスの良い方法であることを突き止めています。

まとめ:米ぬかは「捨てるもの」から「摂るべきもの」へ

この研究が伝えているメッセージはシンプルです。
・米ぬかには、水に溶ける珍しいタイプのヘミセルロースが含まれている
・この繊維は血中コレステロールの上昇を抑える働きを持つ
・腸内のビフィズス菌を増やし、腸内環境を整える
・摂取量に応じて大腸がんの発生率を下げる可能性がある
・工業的な抽出方法の工夫により、食品素材としての応用が現実味を帯びつつある

精米の副産物として何気なく捨てられてきた米ぬかですが、その中には現代の生活習慣病予防にとって心強い味方となる食物繊維が眠っているのかもしれません。


出典:青江誠一郎(1994)「米ぬか食物繊維の機能性について」醸協 第89巻第1号, p.48-52