「かさ増し」と呼ばれた米ぬかが、ペットフードで見直されている理由
昔は「安いかさ増し材」。いま起きている評価の逆転
ペットフードの原材料表示に「米ぬか」と書かれていたら、あなたはどう感じるでしょうか。
少し前まで、米ぬかのように「精製したあとに残るもの」は、安く量をふくらませるための材料だと批判されがちでした。
ところが最近、その見方が大きく変わってきています。
食物繊維、ミネラル類、ビタミンB群、ビタミンEなど、複数の栄養素をあわせ持つ素材として、栄養学的な価値が見直されているのです。
素材によっては、かつてよりずっと高い値段で取り引きされるようになりました。
海外では「ライスブラン」と呼ばれ、自然派をうたう製品で人気の高い原料になっています。

白いごはんが手放しているもの
わたしたちが毎日食べている白いごはんは、玄米をけずって作られます。
そのとき外側からはがれ落ちるのが、米ぬかです。
重さでいえば、米ぬかは玄米のほんの数パーセントにすぎません。
けれども、けずり落とされたその薄い層にこそ、栄養がぎゅっと集まっています。
米を精白したあとの米ぬかには、粗タンパク質、粗繊維、ビタミン類、ミネラル類が多く含まれます。
反対に、デンプン質は少ないという特徴があります。
つまり米ぬかは、「カロリーのかたまり」ではなく「栄養と繊維のかたまり」なのです。
ペットフードに食物繊維が必要な、地味だけど大事な理由
食物繊維と聞くと、人間の便秘対策を思い浮かべるかもしれません。
でもペットフードの世界でも、食物繊維はとても重要な成分として扱われています。
セルロースやリグニン、ヘミセルロースといった繊維は、腸内で発酵しにくい「不溶性食物繊維」です。
これらは便の形を保つはたらきに、大きく関わっています。
うんちがゆるすぎても、かたすぎても、犬や猫の体には負担になります。
その「ちょうどよさ」を支えているのが、繊維なのです。

主役だけでは足りない。だからこそ米ぬか
ペットフードの食物繊維は、主にトウモロコシ、小麦粉、脱脂大豆といった穀類から供給されています。
ところが、それだけでは量が足りなかったり、繊維のバランスが偏ったりすることがあります。
そこで、繊維を豊富に含むさまざまな原料が組み合わされます。
米ぬかは、まさにその役割を担える素材のひとつです。
しかも繊維だけでなく、ビタミンやミネラルも一緒に持ってきてくれます。
ペットも人と同じく飽食の時代を迎えました。
「足りないものを足す」より「多すぎるものを整える」ことが大切になった今、米ぬかの有用性はあらためて注目されています。
ただし、いいことばかりではありません
ここで、正直にお伝えしておきたい注意点があります。
米ぬかに含まれるリンは、その多くが「フィチン態リン」という形で存在しています。
これは有機物と結びついたリンで、そのままでは体に吸収されにくい形です。
このフィチンを分解するには、フィターゼという酵素が必要になります。
ところが犬や猫のような単胃動物は、消化管の中にフィターゼをほとんど持っていません。
つまり、表示の数字どおりのリンが使えるわけではないのです。
そのためペットフードの設計では、脱脂米ぬかのリンを含有量どおりには評価しません。
ゼロから3分の1程度に低く見積もり、足りない分はほかのリン源で補うのが一般的です。

「原料を知る」ということ
米ぬかは、魔法の素材ではありません。
得意なこともあれば、苦手なこともあります。
大切なのは、その両方を知ったうえで使うことです。
かさ増し材と切り捨てるのも、万能薬と持ち上げるのも、どちらも正確ではありません。
原料の性質を正しく理解して設計されたごはんこそが、毎日食べるものとして信頼できるのだと思います。
クロノーブは、その米ぬかを主原料に選びました。
だからこそ、良い面だけでなく気をつけるべき点も、包み隠さずお伝えしていきます。
出典
・2015年 ペットフード疑似科学を科学する(3)
・2018年 ペットフードで使用される主な食物繊維・オリゴ糖源原料
・2021年 ペットフードの主な原料