日本人の入浴習慣が腸内細菌に及ぼす影響
胎児の腸内は基本的に無菌状態ですが、出生時に母親や環境由来の細菌に影響をうけ新生児の腸内細菌叢の形成が始まります。赤ちゃんはお母さんから栄養や免疫にかかわる物質を受けっとって成長しますが、腸内細菌もお母さんからの大切なプレゼントです。日本人では、母子間に限らず家族間で腸内細菌が伝播している可能性があります。例えば肥満は遺伝のみならず、家族の食習慣や運動習慣など共通した生活習慣がその原因と考えられます。腸内細菌と肥満の関係は近年明らかになってきており、肥満の成因として重要なのは遺伝よりも生活環境および生活習慣、そしてそれらに大きな影響を及ぼす腸内細菌と言えます。家族間の腸内細菌伝播を調べるために、日本人特有の入浴習慣に着目して調べた研究があります。子供と両親が一緒に入浴する家族、子供と両親が別々に入浴する家族の腸内細菌叢を調べたところ、子どもと両親が一緒に入浴する家族のほうが家族間で共通の腸内細菌数を多く保有していることが示唆されました。
腸内細菌は母親の産道を通って受け継がれること(母子伝播)で腸内に定着するという通説以外にも、父子間や夫婦間でも起きている可能性が示されていましたが、この研究結果から日本人特有の習慣である「家族との入浴」を通して腸内細菌の伝播が起きている可能性が見出されました。
参考文献:T.Odamaki et al. Impact of a bathing tradition on shared gut microbe among Japanese families. Scientific Reports 9(1): Art.No. 4380 (2019)