炎症性腸疾患と腸内細菌
炎症性腸疾患は、広い意味では腸に炎症を起こす全ての病気を指しますが、狭い意味では「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」のことを意味します。潰瘍性大腸炎もクローン病も今のところ原因がはっきりとはわかっておらず、このため発症すると長期間の治療が必要な慢性の病気です。ただ,炎症性腸疾患が自然発症するマウスを無菌状態で飼育すると腸炎が発症しないことから,その発症に腸内細菌が重要な役割を果たしていることは間違いがありません。また炎症性腸疾患の患者さんでは腸内細菌叢のバランスが崩れDysbiosis という状態になっているが報告されています。
Dysbiosisって何でしょうか?腸内細菌叢の異常のことを指す言葉ですが、その原因として抗菌薬、プロトンポンプ阻害薬(胃酸を減らす薬)などの薬剤投与だけではなく欧米型の食事、環境因子など種々の要因が考えられています。一般に欧米型の食事は食物繊維が少なく脂肪が多く含まれています。食物繊維は腸内の善玉菌のエサとなりますので、十分な食物繊維を摂取することは、腸内環境を健全に保つためには、とても重要なことです。食事だけで十分量を摂れない場合は補助食品で補うことも可能です。
【参考文献】
1) 野村秀明ほか : 腸内細菌と疾患. 神戸常盤大学紀要 Vol. 9,pp 1-12,2016
2) 馬場重樹ほか:腸内細菌叢とdysbiosis. 日本静脈経腸栄養学会誌 33(5), 1099-1104, 2018