犬の腸内細菌叢
人間において腸内細菌叢は栄養学的,免疫学的,生理学的に重要な役割を果たしていることがわかっていますが、犬ではまだ十分に調べられていません。消化器症状を呈していないトイプードル21頭を対象に腸内細菌叢の特徴を明らかにすることを目的とした研究結果では ①トイプードルの腸内細菌叢には,非常に大きな個体差がある。②腸内細菌叢の多様性は,加齢によって有意に減少する ➂疾患による影響や,同一個体内での経時的変化が存在する可能性がある。④ 特筆すべき事例として,タンパク漏出性腸症において,発症中血中アルブミン値が低値の時は腸内細菌叢の変化がみられました。この事から犬の腸疾患には,腸内細菌叢は密接に関与している事が示されました。 また犬の慢性腸症や免疫抑制薬反応性腸症における腸内細菌叢の変動をみた別の研究では、その変動パターンはヒトの炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)のものと類似していることが明らかとなっています。すなわち、慢性腸症の犬では、全体的に腸内細菌叢の多様性が減少し、腸内細菌叢のバランスに異常が発生することが報告されています。従いまして治療・予防戦略もヒトの場合と同じように腸内細菌の健全化が重要になります。
【参考文献】
1)村田 佳輝: 犬猫の腸内細菌の役目を考える -腸内環境を整えて,感染症に勝つ- 1. 犬の腸内細菌解析, Journal of Animal Clinical Medicine, Vol. 28, No. 1, 2019
2)五十嵐寛高: 犬や猫における腸内細菌叢と消化器疾患, ペット栄養学会誌,21(3):145-151,2018